吸熱と言えば、「熱取りシート」や「ものが溶ける」が思い浮かぶ。
ここでは「純粋なスズ元素を加熱する」を取り上げる。
スズは「はんだ」合金の主要元素である。
スズは室温では固体であり、232℃では液体になる。

純粋なスズの0℃から300℃における自由エネルギーとエンタルピーは
下図のようになる。 左側の自由エネルギー図を見ても大きな変化は無い。
右側のエンタルピー図を見ると232℃において大きな変化が生じている。

232℃における固体と液体の熱力学値を確認すると

    固体    液体

 G    -27.53       -27.53   (kJ/mol)
 H      6.00        13.20   (kJ/mol)
 S     66.38        80.63   (J/(molK))

であり、
反応前(Reactants)のエンタルピー値H と反応後(Products)のエンタルピー値H
を比較し、エンタルピーが増えていれば、その分の吸熱があること
を意味する。
記号Gは自由エネルギー、Hはエンタルピー、Sはエントロピーを示す。



 Sn(固体)  +  吸熱  --> Sn(液体)

 吸熱量は 7.2 (kJ/mol) となる。融解熱に相当する。


ここでは「232℃未満の状態から、加熱し、232℃の状態へ」としたが、視点を変えてみよう。
たとえば鉄(Fe)の場合「231℃の鉄固体を、232℃の環境に置いた」としても大きな変化は起きない。
しかし、スズ(Sn)の場合「231℃のスズ固体を、232℃の環境に置いた」とすれば吸熱となる。

        

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